ミヤ

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"灯火を囲んで"

ぐるぐると、灯火を囲んで人々が踊っている。
まるで百鬼夜行のような光景。
一緒に踊ろうと、せめてもう少し近くに来ないかと、そう誘いに来る人達に苦笑して首を横に振った。

誰もが浮き足立つ祭りの夜に一人にはできない、せめて目の届く位置には居るようにと、祖父母に懇々と言い聞かせられてはいた。
けれど、やはり沢山の音が混ざった空間に長時間留まるのはしんどくて。
ふい、と喧騒に背を向けて歩き出す。
ざわめきが遠くなる方向へ、
揺らめき長く伸びた影さえ及ぶことの無い場所へ。

朱い鳥居の前で一礼し、狛犬の足元にヒョイと腰掛ける。
冷たい石像に身を預けると、頭と目と耳の痛みが僅かに楽になった気がした。
風に乗って聞こえるお囃子と人々の笑い声。
片膝を抱えて、遠くに灯る賑やかなひかりをぼうっと見つめる。
わいわいガヤガヤとした騒々しい場に参加するのは聞こえの関係もあってどうにも厳しいものがあったけど、遠く離れた輪の外側から眺める分には嫌いじゃなかった。

11/8/2025, 7:46:14 AM