蒼空

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「君以外なんて居ないよ」
そういった彼はその日から私の前に現れなくなった。

「ねえ、夏佳(なつか)元気だしなよ。彼氏くんが居なくなったのもう2年も前だよ?」
そう言われた言葉が頭の中を回りながら家路につく。

彼が居なくなってもう2年が経った。
いつもは長いと感じるはずの2年が今は早く感じた。
なぜ彼は居なくなったのだろう。

不意に頭の中を彼の両親が過ぎった。
彼が居なくなって私は彼の両親を2度か3度尋ねたが、そのどれもが彼の居場所と両親の知っていることを聞いただけだった。

私は家が見えてきた所で引き返し、彼の実家へと向かう。
彼の家はさほど遠くない。
彼の両親は悟ったかのように椅子に腰掛けるなり言った。

「あの子の居場所を知りたい?」

そう言われて案内されたのは私の家の近くの墓地だった。

そこのひとつに彼の名前が刻まれていた。
「うそ……どうして……」
「あの子はね、心臓が弱くてね。頑張ってたんだよ。夏佳ちゃんの為に。でも……ドナーが見つからなくて……」

どうして彼は言ってくれなかったんだろうか。
そう思うよりも先に溢れる涙が止まらなくなり、立っていられなくなった。

そんな時後ろから彼の声が聞こえたようだった。
「君を悲しませくはなかったんだけどな」

君はずるい人だ。

《突然の別れ》

5/19/2024, 1:41:20 PM