ウサギ

Open App

その日、窓の外から聞こえる雨の音で壮五は目をうっすら開く。
「ん……」
少しぼんやりとした頭でのそりと起き上がる。そうして窓へ目を向けると夜明け前なのか空はまだ黒に染っていた。
その黒が自分を飲み込んでしまいそうに思えて、壮五は慌てて目を逸らした。
「……たまきくん……」
隣に眠る自分の恋人に安堵のため息をこぼす。自分と違い心地よさげに寝息を立てる彼の頬に触れて心を落ち着かせる。
再び布団に潜り環の手を両手で包み込むと無理矢理にでもと目を閉じる。
「……寝れんの?」
不意に聞こえた声に目を開けるとこちらを見つめている環と目が合う。
「起こしちゃった?」
「起こそうとしたくせに」
そう言って笑う環に壮五はバレてたかと苦笑いを浮かべる。
「怖い夢でも見たん?」
「そうじゃない、かな。雨の音で、目が覚めたんだけど……」
拙く紡ぐ言葉を環はゆっくり耳を傾ける。
「真っ暗な空を見てるうちに、怖くなっちゃった」
「それで俺の手?」
「だって……環くんの手、おっきくて安心するから……」
環は小さく頷くと少し嬉しそうに口角を緩める。
「そーちゃん、手、パーして」
「ぱー」
言われるがままに壮五は両手を【パー】にして環から手を離す。すると今度は環が壮五の手を掴み自分に引き寄せた。突然の温もりに壮五は目をぱちくりさせる。
「どっちのほうが安心する?」
「ん……こっち」
自分よりも大きな背に腕を回して環の胸にそっと擦り寄る。
「起きるまでぎゅーってしてていからな」
「うん……」
環の優しい声を聞きながら壮五は少しずつ深く微睡みに落ちていった。
壮五の寝息を確認した後、軽く髪を撫でると自分も目を閉じた。

9/14/2024, 1:35:45 PM