想い出に浸っているというのは格好悪いものだ。だって自慢話ばかりするケンはなんかナルシストっぽい。それにまだそういうキラキラした過去を持っていない者などにとっては聞くだけで赤面ものだ。羨ましいのだろうか。わたしもあんなふうに、ワイングラスを片手にくるくるさせたいのだろうか。
久しぶり押入れにあるそこに手を伸ばす。ふたりの想い出がそれにはたくさん詰まっているはずだった。そこには屈託のない笑顔を満面に浮かべる幼いころのケンとわたしがいた。いつからこんなふうになったのだろうか、とゆっくり頁をめくりながら考えた。
4/2/2024, 7:03:53 PM