「はあー、寂しい……
彼氏欲しい」
友達の沙都子の部屋でゲームをしていると、心の声が漏れてしまう。
いつもはアクションゲームをしていたのだけど、飽きたからと趣向を変えて乙女ゲーをしたのが悪かったかもしれない。
寒い冬なのもあって、妙に人肌が恋しい
「相変わらず急ね、百合子……」
私の独り言に、呆れたように返す沙都子
普段は私の独り言を無視する癖に、今日は律義に反応する。
ひょっとして、沙都子も寂しいのかな?
「急じゃないよ。
クリスマスまで一週間。
世間様のカップルはクリスマスを待ち遠しく思っているって言うのに、私には恋人どころか仲のいい異性すらいない!
女子高生としてあるまじき事態!
あゝ、独り身は寂しい」
私は熱弁する
けれど、私の熱量とは対照的に、沙都子は意外そうに私を見ていた。
え、私変なこと言った?
「何か言いたい事でも?」
「誤魔化すような物じゃないからハッキリ言うわね。
正直百合子が彼氏欲しいって言うとは思わなかったわ。
てっきりゲーム以外には興味ないかと……」
「そんなことないよ!
コイバナ大好きだよ!」
「ゲームと彼氏、選ぶとしたら?」
「ゲーム」
私の返答に、再び呆れたような顔をする沙都子。
私、なにかやっちゃいました?
「いつも通りのあなたで安心したわ。
あ、邪魔して悪かったわね。
ゲーム、再開してもいいわよ」
「なんだか含みがある言い方だなあ……」
なんとなく、
さてどうしたものか……
「そういう沙都子はどうなのさ?
そっちも浮いた話無いでしょ?」
「失礼ね。
毎日告白されて大変なのよ」
「へえー、そうなんだ。
まあ、男子共は沙都子の黒いところ知らないからなあ……」
「ゲームみたいにぶっ飛ばされたいの?」
「……じ、冗談じゃんか。
本気にしないでよ」
私は殺気に身がすくむ。
沙都子は気が短すぎる。
この事を男子が知れば、きっと付き合おうだなんて思うまい。
「それはともかく!
私はクリスマスまでに彼氏を作る!
そしてクリスマスデート!
その時に悔しがっても知らないんだから!」
「別に、彼氏作るなまでは言ってないわよ……
あ!
これは確認なんだけど、百合子のクリスマスの予定は埋まってるという認識でいいのよね?」
「そう言ってる」
「そう、残念ね。
我が家主催のクリスマスパーティ、百合子は不参加と伝えておくわ……
百合子のリクエスト通り、凄いケーキを用意する予定だったのに……
本当に残念だわ」
「すいません、調子に乗りました。
クリスマスは暇です」
「あなた、本当にブレないわねえ……」
今日何度目か分からない、沙都子の呆れた顔。
でも気にしない。
腹の膨れない彼氏よりも、美味しいケーキ!
どんぬ寂しい思いをしようとも、ゲームとケーキさえあれば何もいらない!
私はクリスマスに予定を入れないことを、心に固く誓うのであった。
「で、『彼氏を作って一緒にパーティに参加』とは思いつかないわけね」
「あ」
ちゃんちゃん。
12/20/2024, 3:33:30 PM