8木ラ1

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「明日死ぬわ」
空を眺めながら言った。
「マジで?」
彼はすぐに起き上がって俺の目を覗き込む。

しばらく沈黙が続いた。その間も彼は俺をじっと見つめていた。

「もう嫌だからさ」
振り絞って出した声。
その声は震えていて情けなかった。初めて友人の前で弱音を吐いたせいか、目頭が熱くなる。
視界がぼやけ、もう空なんて見えていなかった。
「そっ、か、何があったの?」
先程より小さい声で問われる。

俺は手のひらで瞼をこすりながらゆっくりと口を開く。また声を振り絞った。
「辛いんだよ。周りを見たら俺はすでに置いてかれていて、落ち込んでる間にもみんな遠く遠くに進んでってる」
言葉を紡ぐだけで精一杯だった俺は、思っていない事も思っている事も事実も吐き出していた。
「当たり前のことができなくて、頑張ってるのに叱られて、努力をしていないって勝手に決めつけられてさ」
ずびっ、ずびっ、と鼻をすすりながら吐き出す俺に、彼は黙って聞いていた。羞恥心なんてとっくにどうでもよくて、弱いところを全てさらけだす。

何時間たっただろうか。
日差しが熱く明るかった空はオレンジ色になっていて風が涼しかった。
「…あ、かえらなきゃ」
まだ震えている声で呟く。
「本当だ、帰る?」
彼の声は優しくてとても暖かった。
もっと彼のそばにいたくて、それでもやっぱ一人の時間もほしくて。

立ち上がった彼は俺に手を差し出した。
「立って。帰ろ。」
俺は手を取らないで立ち上がる。
分かっていた。彼もきっと綺麗事を並べるんだと。

─だけど違った。立ち上がった俺に彼は言った。
「じゃあ、また明日な!」

【また明日】

5/23/2024, 3:22:24 AM