シロツメ ナナシ

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『 「雛」 〜厄受け神様の伝説〜 』


ヒナと呼ばれる女の子
その子はとても健気で優しく
その目はすごく優しくまっすぐ
まるで
こちらの心を見透かしつつも
その悪を取り除くかのような
吸い込まれるような
それでも慈愛が宿ってるかのような
とても不思議な眼を持っていた

女の子は
同じ子どもの友達
特に女の子の友達に好かれていた
子どもたちに降りかかる
ちょっとした怪我や問題に
小さいことから大きいことまで
よく気がつく子だった

ヒナの眼の届く子どもなら
小石やボールや人など
飛んでくることやぶつかることがわかるのか
咄嗟に身を挺して守ったり
知らせてくれたりするのだ
時には大きな怪我になる前に
事前に止めてしまうことさえあった


そんなある日
その村は原因不明の病が
子どもたちを中心に蔓延していた
医者もあの手この手と尽くすが
ほとんど効果がなく、
命を落とす子も現れ始めてしまった……


「―――私、祭壇に行ってくる」


そう言い放ったのはヒナ本人だった
大人たちは必死に止めた

確かに今は手も足も出ない
それにその祭壇は、祈りの祭壇
とは名ばかりのただの子供殺しの
昔の酷い習わしなのだ
それを大人たちは知っている
だがヒナは、
「私が頑張ればみんなが助かるかもしれない」
そう信じて止まなかった

大人たちは総出で止めた
絶対にそこに行かないで―――と


その祭壇は丈夫な大理石
人の手ではなかなか壊すことができず
そのままにしていたのだ

その夜、
大人たちの目を盗み
ヒナはひとり、
その祭壇にたどり着いた

何をどうすればいいのかわからないまま
その祭壇の上に乗り
正座をして、ゆっくり目を閉じた

(どうか…、
みんなのびょうきが治りますように)


―――すると、
ほんの僅かに聞こえた

[イノチヲカケル気ハアルカ?]

ヒナは、少し怖かったが
ゆっくりと……うなづいた


(わたしが、全部受け止めたい)…と


すると祭壇が薄く輝きだし
下からは草木が生えだし
ゆっくりとヒナを包み込むように
被っていった


ツルと葉が、
まるで着物を着せるように
何枚にも重なっていく

ヒナは動けなくなっていった

だが、少し苦しさを感じるが
それ以上のことは特になかった
まるで人の形をしたまま
植物や人形にでも
なったかのような感覚だった


―――翌朝
村の子どもたちの病は
不思議なほど完治してる子
ほとんど回復してる子、
昨日までの騒ぎがうそのようになっていた


そんな中……
ヒナがいないことに気づいた村人たち
村中を探し回り、
まさかと思い、あの祭壇に探しに行った

そこには―――
祭壇のあるはずの場所には
大きな木のようなものが
何かを覆うようにそびえ立っていた

村人たちはそれにすぐに気付いた人が
その覆われた中心あたりに
穏やかな顔で眠ってるかのような……

―――ヒナだ…
と、誰かが小さくこぼした

言われてみんなもハッとなり
何人かが急いでそれに駆け出した
それは助けたい一心だった
とにかく切るものを持ちより
みんなで懸命に救い出そうとした

だが―――
その植物は、切っても切っても
次々と生えてくる
切った葉っぱや枝は、
すぐに朽ち果て、異臭を放つ

「こ……これは……!」

すぐに分かった
それは村に蔓延していた病が
吸収されているのだと


悲しみに包まれていった…

ごめんね……ごめんね………!
ありがとう……、と

せせり泣く声の中から
色んな声がこぼれていた


ある村では総出で
ある大きな御神木の健康を支えるように
土や環境を守り整えてられている

その御神木の名は
『オヒナ様』と、言われている―――



〜シロツメナナシ〜

※この物語は、私の創作です

3/4/2026, 6:38:28 AM