小学校の時、こんな授業があった。
「――はい、じゃあ今日は『みんなのお気に入りのもの』について、紹介してもらいまーす。グループになって、話してください」
……お気に入りのもの、これでいいのかなぁ。
私の手には、ある一通の手紙が握られていた。そう、それは自分の好きな人からもらった、初めての手紙だ。内容は、『ミカちゃん、またいっしょにあそぼーね!』というもの。保育所の時にもらった。私がケガをした時、いじめられてた時、いろんな時に助けてもらった。かっこいいヒーローのような存在。
……あ、私の番だ……
椅子から立ち上がり、深呼吸をする。ちらりと他のグループを見回してみると、なんと、彼も一緒のタイミングで立っていた。彼もなにか、小さなものを握っている。
すると、偶然にも話すタイミングまで被った。
「私のお気に入りのものは、この手紙です」
「オレのお気に入りのものは、この手紙です!」
……えっ?今、手紙って。
私は発表中もその事が気になって、仕方なかった。誰からの手紙なんだろう……
「――それで、あの時の手紙って、結局誰のものだったの?」
「はぁ!?なんで今さら言わなきゃいけねぇんだよ!」
「いーじゃんいーじゃん、ずっと気になってたんだよ?」
高校になった今、彼からあの時の真相を問いつめている放課後。すると、恥ずかしそうに視線を逸らし、頬をかいた。
「……お前からのだよ。ミカ」
「……!」
思わず赤面してしまう。すると、「なんでお前が真っ赤になるんだ!!」って、怒られちゃった。でも、すんごく嬉しい。もう、飛び跳ねたくなるくらいには。
「ねぇ、これからも私のヒーローになってくれる?そばにいて、守ってくれる?」
「あったりめーだろ。助けてやるよ。ほら、帰んぞ」
そう言って、彼は手を差し伸べてくる。私は、はにかんでその手を握った。
〜お気に入り〜
2/17/2023, 3:35:35 PM