案山子のあぶく

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◎目が覚めるまでに

研究室からのそりと出てきた竜也は、
低い声で「コーヒー」とだけ言い放った。

海人はそれを聞いて溜め息を吐き、薄めのインスタントコーヒー───ではなく。
麦茶を差し出した。

「お前、何徹目?」
「三徹目……いや四か?」
「そうか家に帰れ」

海人はにっこりと笑ってはいるが、目が笑っていない。

(しまった)

何故か、海人はかなり怒っている。
頬をよく見るとピクピクと引きつっていた。

竜也はそれから目を逸らし、
ぐいっとひと息にコーヒー(麦茶)を煽ると身を翻した



ぐらりと視界が歪み、膝から崩れ落ちた。

「よーく寝てな、馬鹿野郎」


竜也が寝落ちたのを確認すると、
海人は二人に電話をかけた。

「竜也は寝かせたから戻って来てくれ」





薄暗い部屋の中を三人の人影が覗き込む。

「ちゃんと寝てるか?」
「ぐっすりだな」
「耳栓も付けとくか」
「良い案だ」

竜也が熟睡しているのを確認した後、
海人はそっと扉を閉めて二人に向き直った。

「それじゃあ、作戦を確認するぞ」
「「応」」
「燈真は広場の飾り付け、俊一は料理……あ、ヘルシーで胃に優しいヤツな。俺は荷物の受け取りと道具の準備。で良いよな?」

ニヤリと笑って全員が作戦にうつる。


──MISSION──
竜也の目が覚めるまでに、
誕生パーティーの準備を完了せよ。

8/4/2024, 7:38:58 AM