雪だるま

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 目が覚めると、そこには見慣れた景色が転がっている。何の変哲もない、いつもの部屋。それでもどこか違和感が拭えず辺りを見回す。
…あいつがいない。ああ、出ていったんだな、と俺は思った。
 俺とあいつの関係は異常だった。あいつはいつも、自分の人生を生きたい、と言っていた。けれど俺と一緒にいる限り、その夢は叶わない。だから、あいつは出ていった。
 あいつが初めて自分でした選択は、俺に無償の愛を与えることだった。なんでよりによって俺だったのか。あいつにふさわしい奴なんて他にいくらでも居るだろうに。
 ま、それでもまだ遅くはない。次はお前にふさわしい男と出逢ってせいぜい幸せになってくれ。

…なんて、俺自身は幸せなんてものを少しも信じてないくせに、ついあいつの幸せを願ってしまう。
とりあえず、俺はあいつにふさわしくない男であり続けるために、今日も僅かな金だけを持ってパチンコに向かう。


(目が覚めると)

7/11/2023, 4:17:07 AM