椋 muku

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37度8分。なんだ、平熱か。この火照りは気のせいか。それなら今日も学校行かないとな。

巨大な岩のように重く肩にのしかかる勉強道具が今日はなんだか重く感じられない。それもこれも全部風邪のせいだよな。

教室に入るなりマスクを珍しがるクラスメイト達。なるべく喋らないように努力はしたかった。

「おはよ。あ、マスクしてる。風邪ひいた?俺に移して?冗談だって。なぁ、何とか言えよ」

こ、コイツが来ると勝手に口が動くんだ。

「朝っぱらから賑やかなお坊ちゃまだこと。こちとら喋らない努力してるんですが察してはくれませんの?何様だごら」

文末表現も全部が滅茶苦茶だった。

「お、やっと喋った。やっぱ鼻声なー。大丈夫そ?無理すんなよ。」

は…なんだ、意外に優しいじゃん。更に熱が上がるような予感がした…はずだった。

「まぁ、だからと言って構って貰えないのは寂しいし?意地でも喋らせてあげるからたんまり構ってね♡」

コイツ…本当に…期待した自分が完全に馬鹿だった。

「好き勝手言いやがんな。そんなに構ってもらいたいなら教材の一つや二つ持ってこいや。あんたの大っ嫌いなお勉強たんまり教えてあげるよ♡」

「参りました。今日はなんなりとお申し付けを」

朝から騒がしく1時間も授業をしてないくせして疲れ果てる。頭もボーッとして風邪の恐ろしさを知る。

「おい、でも無理はすんなよ。どうせお前の事だから37度後半でも出てんだろ。ほら、先生来るまで俺に寄りかかってろよ」

「…ん、さんきゅ」

いつもはウザイのにこういう時は自分のことをコイツが1番知ってて寄り添ってくれる。コイツの優しい匂いに安心してボーッとする頭をこつんと寄りかからせる。はぁ、ほんと惚れちゃうよ。なんで恋人いないんだろうな。

題材「風邪」

12/16/2024, 12:18:56 PM