遠くの空へ
(才蔵さん、まだかな……)
私は一人、才蔵さんの屋敷で帰りを待っていた。
縁側に腰掛け、ひっそりと浮かぶ月を見上げて溜息を吐く。
(こんな風に待っていたら、鬱陶しがられるかもしれない……)
それは嫌だ。
けれど、何も知らない今の状況はもどかしい。
(私、どうしたいんだろう……)
自分の心がわからず胸に手をあてる。
(ん?懐に何か入って…)
取り出したそれは、昼間慶次さんから貰った美しい石だった。
(あ……結局返しそびれてたんだっけ)
月明かりにかざすように石を持ち上げてみる。少し動かすだけで、それは様々な色に変化した。
(不思議な石……まるであの人みたい)
4/12/2023, 10:57:47 AM