憂一

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『二人だけの秘密』

僕の住む街にはちょっとした山がある。
山のてっぺんには神社がある。神社近くは石段になっているけれど、そこまではむき出しの地面を歩いていく必要がある。
僕と幼馴染の遊は、毎日学校終わりにその神社に通っていた。
神社の前のあたりに東屋があって、そこにランドセルを置いて山を歩き回るのが日課だった。
山を歩くのは、小さな冒険のようで楽しかった。
ある日のこと、いつものように山を探検していると、遊が何かを見つけた。
「ねえ、これなんだと思う?」
僕は、遊が見せてきた何かを観察してみたけれど、よく分からなかった。石のようだけどところどころふわふわしているように見えて、光の当たり具合で全然違う姿になって見える。
僕らはそれを二人の宝物にしようと、東屋まで持ち帰った。
どこかに隠しておこうと思い、神社の床下の隙間に穴を掘って埋めることにした。
埋め終わったとき、遊が言った。
「大人になったら、これを掘りに来ようよ。それで、二人でこれを持ってこの街を出るの。」
僕にはそれが何だか大切なことのように思えて、強く頷いた。

5/3/2024, 10:53:41 AM