NoName

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「あ、見て。ちょうちょだ」
のどかなそよ風を背にしての下校中、隣の友達は指を指す。その先には白くて小さな蝶。
「ほんとだ」
「何シロチョウだっけ?」
こてんと頭を傾ける友達。ちょっとした事が頭からぽっかり抜けること、あるよね。私は胸を張って教えてあげる。
「ホンシロチョウね」
「ホン?」
「ホン」
二度聞かれた。友達は難しい顔のまま、「ホンだっけなぁ…」と呟いている。違ったっけ?
ただ、こんな事のためにスマホを出す気にはなれない。友達も同じようだ。そうして私たちの話題は、『明日の体育をどう乗り切るか』にのったりと移っていった。

5/10/2024, 1:03:27 PM