廊下側の席に座っているあの子をじっと見つめる。
黒板に隅に書かれている英単語なんて、もうどうでもいい。
あの子が口を開きこう言った。
「え、待ってこれなんて読むの!?」
あの子の隣にいるモブが笑っている。
英語のペアワークなんてなくなればいい。
対して意味もないこんなことをしたって時間の無駄だ。あのモブも、あの子に話しかけられていてずるい、ずるすぎる。
俺が1番あの子を好きなのに。なんで、なんでだよ。
笑っているモブが心底邪魔で仕方がない。
空が橙色になる下校時間、階段を降りているモブを頭の中で想像した。
「突き落としてやろうかな」
口に出す予定のなかった言葉が出てきて少し焦った。
誰かに聞かれていないか不安になったが、周りの様子を見る限り、誰にも聞こえていないだろう。
あー、俺だけ見てればいいのに。
そんなどうでもいいモブに愛嬌振りまく必要なんてないこと、早く気づいてくれないかなぁ。
苦戦してるその顔もすごく可愛い。勉強ができなくても、こんなに好きでいてくれるのは絶対俺だけだよ。
俺がいないとダメな体になればいいのに。
脳内がどんどん騒がしくなっていく俺の左手には、
2つに折られたHBの鉛筆だった。
木の素材が親指に刺さったが、そんなことは気に留めるほどのものじゃない。
目を細め、モブを睨む。
いや、こんなカス視界に入れる価値もない。
そう思い、目の焦点をあの子に合わせる。
「 え 」
偶然目が合ってしまった。
どうしよう、俺なにかしたかな、どうしたらいいんだ、俺今変な顔してないかな、てか今日寝癖ついてたっけ、やばい、心音があの子に届いてそうで落ち着かない。
俺と目が合ったあの子は首を傾げて微笑んだ。
えっ、え、なにそれ、超可愛い。他のモブに見られてないかな、あの顔、俺だけっ、俺だけに見せててほしい。てか俺のこと好きなのかな、好きじゃなかったら微笑んだりしないよね、そうだよね…そうだよな、
絶対そうに違いない。両想いに決まってる。
今、世界に2人だけなんじゃないかなって思うくらい他のモブが見えない。
見つめ合う男女に教師の声は届かない。
あの子、よく見ると目の色が黒色だ。俺、目の色茶色なんだよな、あの目、欲しいなぁ。
…そうだ、交換。交換すればいいんだ。
そんなことを考ていると目を逸らされてしまった。
目を逸らされたショックで手の感覚が戻ってきた。
「痛っ…気づかなかった…」
でも、やっぱりそんなことはどうでもいい。
目を逸らした君が、今どこを見ているのか知りたい。
そう思い、視線を元に戻す。
次は耳を真っ赤にした君が小さく手を振ってくれた。
やっぱり、俺のこと好きなんじゃん。
そんなに見つめられると、
俺、
俺……
もっとすきになっちゃうじゃん
テーマ「見つめられると」
作品名「歪んだ想い」
3/29/2026, 10:04:47 AM