放課後」
「放課後マシンて知ってますか?」
「何それ、放課後にマシンが起動する…田植え機?」
「発想が浅すぎて逆に一周してオリジナリティを感じるような所、好ましいですね。違います。」
「違うんだ。なんなの?」
「ほらタスクさん、もう学生辞めて久しいじゃないですか。放課後の感覚とか、感傷とか、何かあります?」
「…そう言われると特にないかな…う、うーん、やっと解放されたぜ腹減ったマックしばくかな、とか、そんな?」
「うち田舎でマックありませんでしたが、まあそんなですかね。
高校生ならば。」
「ーーあ、まあそうだね。何その圧」
「小学生の頃の放課後感覚、覚えてます?」
「ーー覚えてるよ。思い出したくないな。」
「じゃあその思い出したくない小学生の放課後感覚、塗り替えてあげます。どんなのが良いですか?」
「塗り替えれるの?」
「サンデー調、ラブコメ調、マガジン調、ヤンキー風味の友情、ジャンプの異世界バトル、秋田書店で突然ホラーも可能ですが…」
「いま微妙に偏りあったね。カシハラさんの読んできた本がなんとなく見えた気がした」
「で、どんな味に塗り替えます?」
「味なんだあ…要らないよ。おれ塗り替え嫌いなんだよね。」
「無かったことに出来るのに?」
「でもきっと、
どこかで一生忘れない
「忘れちゃいなよ」
カシハラさんが目を糸のように細めて満面の笑顔で微笑む。
「嫌な時に、嫌だった自分を、ネグレクトするの?カシハラさんはさ。」
カシハラさんは背後から小さな緑色のプラスチックのボールを出してきた。
満面の笑顔で。
差し出した緑色は、よく見るとメロンシャーベットの器だった。
「良い子にはアイスあげます。タスクさん。」
「マシンじゃないじゃん、よくこんなレトロアイス買ってきたね。てかこれアイスじゃないからね」
受け取って、一口掬って口にする。偽物のメロンの味が少し瞼に差し込む。シャーベットの欠片が目に差し込むような感じがする。
「掬ったタスクに、愛すあげます。」
カシハラさんが笑ってる。
カシハラさんの放課後は、愛せる放課後だったのか、それとも愛せない放課後だったのか、
気にはなったが何も聞かずにそのままメロンシャーベットで流した。
了
10/12/2024, 4:20:25 PM