Ryu

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思い出の公園で、ひとりきり。
深夜のこの時間には、僕以外誰もいない。
ポツンと灯る街灯の下で、ベンチに座り音楽を聴いている。

君が僕のもとを去って半月。
今さら、何がいけなかったのかなんて、考えたところで答えは出ない。
このベンチに座り、告白をした。
あの日、わざわざこの公園まで呼び出して、ド緊張しながら隣に座ってもらって、なかなか言葉を発せずに気まずい間が流れた。
あの時点で君は、告白されるのだと気付いていただろう。
その言葉を待つ間、どんな思いでここに座っていたのか。
ほんの少しでも、幸せが訪れたと感じてくれただろうか。
そしてその幸せがいずれ、終わってしまうことも。

今は、ひとりきり。
あの日の自分と、今の自分。
同じ場所にいるのに、まったく心の中の情景が違う。
幸せを手に入れようと奮起していた自分と、幸せを見失って途方に暮れている自分。
大きな喪失感。
だけど、心のどこかで、ひとつの物語が終わって、新しい始まりを迎えるような、少しだけ自分を鼓舞する気持ちが生まれていることも事実だ。
あの日、このベンチで奮い起こした勇気を思い出して、もう一度立ち上がってみよう。

今はひとりきりでも、僕にだって未来がある。
その未来は、きっとひとりきりじゃない、誰かと一緒に築いていけると信じている。
耳に届く音楽が、優しいバラードから大好きな応援歌に変わったと同時に、僕は歩き出した。
誰もいない夜の公園を、いくつかの思い出に浸りながら歩き、出入り口のところで、立ち止まり振り返る。

「楽しかったよね。そんな時間を、ありがとう」
誰に言うともなく、素直な思いが零れ落ちた。
終りがあるから始まりを迎えられる。
その始まりは、心躍るほど喜びに溢れるものかもしれない。
今はそう信じて、思い出の公園をあとにした。

9/12/2025, 2:16:09 AM