はた織

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 私はその婆さんにそっと耳打ちをした。

「ありがとうございます、あなたの老化した醜い姿のおかげで、ほんとうに美しいマダムの麗しさをより知ることができました。
 耳が悪いと口慣れた言い訳をして、こちらの言い分を聞き流し、挙句は人の言動に勝手に嘆いて、自らの終活に一抹の悲しみを味わって帰られる臍も腰も曲がったその醜態。
 背筋を伸ばしてご機嫌ようと、誰にも彼にも会釈する麗しきマダムの姿が、更に神々しく輝きます。
 ありがとうございます、美しきものは醜きもののおかげで煌びやかになるのですね。改めて、自然の調和を知りました」

 耳打ちしたとて、老廃物が詰まった婆さんには聞こえまい。婆あと呼べば、若さ誇りたい矜持で聞こえやすくなるでしょうよ。
 しかし、馬鹿につける薬は無い世のことわりだ。
 知識を得た者の感謝にも聞く耳はない。ただ幼稚にわがままに心臓の鼓動も聞こえなくなるだけだ。
                 (250114 そっと)

1/14/2025, 1:40:56 PM