題 君の目を見つめると
君って催眠術を使えるんじゃないかな?
君に何か頼まれると絶対に逆らえない。
「あ、いたいた!松野くん」
今考えていた当の本人が駆けて僕のもとへやってくる。
「探したよ、悪いけど、今日放課後補習で忙しいんだ。代わりにいつものファッション雑誌買ってくれる?本屋寄る時間ないから。はい、これお金!」
「・・・分かった。買っとくよ」
「ありがとう、明日渡して」
佐々木さんは笑顔でポンッと僕の肩を叩くと去っていく。
こんなことあっていいのか?
佐々木さんが去った1分後にそんな考えに至る。
頼まれた直後は、何の疑問もなかったのに。
そもそも僕って人の頼みごととか聞かないほうだよな。
教室に戻ると、友達の晴樹の席に行く。
「やっぱりおかしいんだよなぁ」
「え?佐々木のこと?また何か頼まれたの?」
何度も違和感について話しているから、もう晴樹も何の事がわかっている。
「だって、僕、もともとそんなに人の頼みをはいはい聞くような性格じゃないだろ?」
「まあ、でも、前も言ったけど、佐々木の事何でも願いを叶えたいくらい好きってことじゃないの?」
「違うっ!」
僕は慌てて否定する。
「好きだからって相手の言う事何でも聞いたりしない」
「うーん、じゃあなんだろうなぁ・・・もう本人に聞けば?」
晴樹は投げやりな様子で言う。
「本人に聞いて話してくれる訳無いだろ」
僕はそう言ったものの、このまま何もしないでいても解決しないと思ったので、昼休みに佐々木さんに話があると言って中庭まで連れて行くことにした。
黙ってついてきた佐々木さんは、なに?と聞いていた。
「あのさ、僕、最近佐々木さんの頼み沢山聞いてる気がするけど、どうして?」
「えっ?」
佐々木さんがびっくりしたような顔で問い返す。確かに、いきなり聞かれても困るよな・・・。
次にどう切り出そうと思っていると、佐々木さんが口を開いた。
「何でそのこと気づいたの?」
「は?」
佐々木さんの言葉に、今度は僕がびっくりした顔をする。
「あーあ、せっかく催眠術成功者一人目だったのに!松野くん以外誰も効かないの。よっぽど効きやすいんだねっ」
ニコッと笑いかける佐々木さん。
「な、何してくれてるんだよっ、人権侵害だぞ、早く戻せよ!!」
僕の言葉に佐々木さんは頷く。
「分かった分かった。じゃあ、私の目を見て、解いてあげるから」
その言葉に俺は佐々木さんの目を見た。
その瞬間耳に、
「あなたは今までの会話を忘れます。あなたは私の目を見ると私の願いを何でも聞いてくれます。その事に疑問を抱きませんっと。よしっ重ねがけ完了!」
という声が意識の遠のきと共に聞こえてきた。
そして僕は・・・。
「あれ?また佐々木さんのお願い聞いてるの?やめるんじゃなかった?」
晴樹が、佐々木さんに頼まれたノートを写している僕にそう話しかけてくる。
僕は、晴樹に返答した。
「え?何で?佐々木さんのお願いだから聞くに決まってるじゃん」
4/6/2024, 4:35:04 PM