「まだ続く物語」
あなたが生まれたのは夜明けだった
空は深い深い青色をしていた
私はあなたに希望という名前をつけた
あなたが息をしているか心配で私は眠れなかった。
一日中あなたと二人きり
夜も昼も眠れなくて私は時間を無くしたみたいだった
あなたが初めて話した言葉が何だったか覚えてない
書き留めておけばよかった
ママでもパパでもないことは確か
あなたが初めて私以外の人と長い時間を過ごした時
気が気じゃなかった
迎えに行った時あなたは一人で積み木を積んでいて
その小さな背中に涙がとまらなかった
あなたは自分は悪くないと主張した
目に涙を溜めて気丈に振る舞うあなたは、昔の私に似ていた。
どうか私に似ないでと抱きしめた。
元気いっぱいに走り出していくあなたを送り出した
もう手を繋いでくれなくなったあなたを
背中のランドセルが小さく見せていた
あなたは帰らなかった
前方不注意の車はスピードを落とさなかった
血の通わない肌はあまりにも白かった
小さな体が受けた痛みを思って私は体中を掻きむしった
あなたの写真を、私は選べなかった
今日、風を感じた。
あなたの歩く姿を思い出す
歩きはじめの頃、あなたはたどたどしく足を踏みだし、何度もよろめいた
あなたの歩く姿で、あなたの機嫌が分かった
あなたは俯いて歩き、乱暴に歩き、弾んで歩き、歌いながら歩いた
私にはあなたと紡いだ物語がある。
私に残されたのは、あなたが不在の物語を続ける痛みと祈り
あなたの物語は、永遠に輝きを失わない
5/31/2025, 4:49:41 AM