アリア

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ねぇねぇ来る?
来るよ来る
もう近い?
まだ遠いよ

密々と話し声がする。
おかしいな、幻聴だろうか。
ぱちりと目を覚ませば森の中。

「…何処ここ」

自分は部屋にいた筈なのにと
冷や汗がだらり。
辺りを見渡すも人気はないし木が立ち並ぶだけだ。


あ起きた?
起きた起きた
ねぇ逃げて
まだ大丈夫だろう


再び聞こえる声に目を凝らすと小さな小さな羽根が生えた不思議な生き物。
恐らくこれは妖精と言われるものじゃないだろうか。


「…逃げてって何が来るの?」


会話は出来るのかと投げ掛けた質問に
妖精達は周りを取り囲んでくる。


重くて大きな足音がするの
こわーいやつ
早く逃げないと
生きたいでしょ?


どうやら状況は危険らしくて立ち上がる。
生きたい、こんなところで死ねない。
とにかくこの場所を出なければ。
何か良くないものが近づいてるみたいだから。


こっちこっち
来てる来てる
早く早く
走って走って


距離的にはまだ遠いらしく自分には分からないが
彼らには聞こえるらしい。
言われるがまま導かれるままに
足を向け走っていく。
聞き取れぬ遠い足音に背を向けて。


お題【遠い足音】

10/2/2025, 12:51:10 PM