蒼月の茜雲

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テーマ“梅雨”

学校の教室。
登校時は晴れていたから、傘を忘れた。
外は雨。今は放課後。
帰宅部だからさっさと帰って
ぐうたらしようと思っていたのに
傘が無いから帰れない。
迎えに来てもらうにしても、両親ともまだ仕事中。
祖父母はどちらもかなり遠距離(笑)
兄弟姉妹居ないから
途方に暮れている。
学校に自由にお使いくださいの置き傘は
あったけれど
残っていたのは、明らかに
穴が空いていたり、錆びていたり
ホコリを被っていたり、蜘蛛が巣を張っていたり
正直触りたくない。
潔癖症では無いけど、流石に無理。
教師には、親の仕事が終わるか、雨が止むまで
教室に居させてほしいと頼んである。
渋々ながらも、承諾してくれた。

田舎の学校。コンビニまで片道20分。
その間にずぶ濡れになる。
夏服に変わったばかりだから
雨に濡れたくない。
ブラウスが透けて下着が!とかそう言うのでは無く(ベストがある)
ブラウスが体に張り付くと、簡単に脱げなくなる(着替えの時)のが嫌。
ぐうたらタイムが、減る。
いや、既に減っては居るんだけど。

「あれ、えっと…」
教室の出入り口に、同じクラスでサッカー部のカナメくん(名字)がいた。
「あ、教室に用事だった?着替えとかするなら外出ていようか?」
椅子から立ち上がると
「いや、えっと、君…帰宅部だよね?帰らないの?」
陰キャでカースト最下層の私を知っているだと?
名前は知らないようだが。
「それがですね、傘を忘れて。学校の置き傘もまともに使えそうなのは無くて」
「凄い雨だよね。台風並みって言ってた」
「台風!?」
「ああ、いや、今ここにあるのがじゃなくて…」
つまりは、物凄く豪雨が降ってる地域があるらしい。
「迎えは?」
「うちの両親、まだ仕事中で。」
「そうなんだ?…あの、良かったら、途中までかもしれないけど、一緒に帰らない?」
「え゛!?」
今まで出したことがないような声が出た。
「嫌ならいいけど、困ってる人は放っておけないし」
「駅まで行きます?」
「地下鉄?」
「そうです。」
「…地下鉄通学だったりする?」
「そうですね。」
「……俺もなんだけど」
「わぁ、何という偶然。」(棒読み)
私は知っていた。何度が同じ車両になったこともあったし、隣に立ったこともあった。(偶然)
「じゃあ、地下鉄の駅まで一緒に帰ろうか」

…本当に良いんだろうか。
私。
だが、迷わない。好意は受け取る!
「ありがとう、よろしくね。」
そう言って、カナメくんがユニフォームから
制服に着替えるのを待ち(見てはいない)
一緒に帰った(駅まで)。


陰キャが一瞬だけ
陽キャに慣れた瞬間だった。

6/1/2023, 3:44:14 PM