扇風機が、重たい首を横に振りながら、ガタガタと軋んでいる。いつもは窓越しに見える濃い青緑の海面が、簾に覆われ、日差しも和らいでいる。
叔母は、季節を愉しむ人だ。夏に親戚で集まると、古いかき氷機を出してきてカルピス氷を削ったり、酢橘の輪切りを浮かべたそうめんを振る舞ってくれた。
なかでも、叔母お手製の冷やしパイナップルは格別だった。
屋台のよりうんと大きな果肉が、木の串にどっしりと刺さっていて、持つと手が沈むくらい重たい。
冷蔵庫から出されたばかりのそれは、すぐに湯気を帯びる部屋の空気を押し返す。
「冷やしパイナップル、できたよ」
そう声が掛かると、おちび達が大慌てでやってきて、大喜びでかじりつく。
今ではもう、大慌てで走り回ったりはしない。
けれど、心のなかでは変わらず、幼い頃と同じ速さで足音を鳴らしている。
冷えた果肉はきらきらと輝いていて、ファンタジーの世界にしか出てこない洞窟にある、大きなクリスタルのようだ。
7/2/2025, 11:47:37 AM