前略
春の気配に心ほどける折、貴方のお手紙を拝読いたしました。今宵は、貴方のお手紙を傍らに置きながら、筆を執らせていただこうと思います。
仮面のお話、ひとつひとつ噛みしめるように読ませていただきました。
その奥にある迷いも、恐れも、確かに感じられるようで、胸の内が静かに揺れたのでございます。
貴方が仰る「仮面」は、きっと貴方を守ってきた大切なものなのでしょうね。
それを外すことが恐ろしいと思うのも、無理のないことのように思えます。
けれど私は、ふとある考えを思い出しました。
人は誰しも幾つもの顔を持ち、そのどれもが決して偽りではないのだと。
たとえ仮面を被っている貴方であっても、
それもまた紛れもなく、貴方そのものであると、私は思うのです。
どうか、そのどの仮面も、嫌わないであげてくださいませ。
ですから、無理に外そうとなさらなくてもよろしいのですよ。
仮面を被る日も、外す日も、
そのすべてを私は見ていたい。
貴方が仰るように、時にその笑顔が見えにくくなることがあったとしても、
それこそが、貴方の「好きじゃない」ものなのでしょうね。
けれど、どうかご心配なさらないでください。
貴方と共にいる時の私は、いつでも自然と笑みがこぼれてしまうのです。
たとえ仮面越しであったとしても、その奥にいる貴方に触れている限り、私の笑顔が失われることはございません。
それでももし、再び景色が曇ることがございましたら、
その折はどうか、また私の名を呼んでくださいませ。
仮面の貴方も、仮面のない貴方も、どちらも私にとって
は大切でございます。
どうかそのことだけは、お忘れなきよう。
草々
3/25/2026, 1:36:53 PM