私はパン屋でバイトをしている。
横浜にあるパン屋で、自家製パンも作っているお店だ。
店長は優しいおじさんで、まるで家族のように私と接してくれる。
店に来るお客さんから、まるで親子のようだとよく言われるほど。
顔はまったく似ていないが、もしかしたら、ルーツが同じなのかな、なんてことを思う。
店によく来る青年がいる。
とても誠実な人で、レスキューの仕事をしているらしい。
仕事柄か、赤系の服が多く、そこに黄色い靴や手袋を合わせてきたりするから、たまにセンスを疑ってしまう。
まあでも、それが彼らしい。
店で飼っている犬がいて、彼にとても懐いている。
彼と一緒に、人助けに行きたいのかと思うほど。
店長は、そんな彼と私をくっつけようとしているのか、彼に会いに行く用事ができると、必ず私を連れて行く。
彼が仕事でピンチの時、店長がパンを持って助けに行ったりするのだ。
どこまでパン好きなんだと思うが、そんな彼を店長はとても気に入っているのだろう。
だけど私には、ひそかな想いがある。
他に、好きな人がいるのだ。
私が好きな彼は、どちらかというと、パンよりおにぎり派。
だから、店長に気に入ってもらえないかもしれない。
しかも、彼はいろいろな国を旅している自由人で、今もどこにいるのか私にも分からないのだ。
そんな彼と私の恋愛を、店長は快く思ってくれないかも。
だけど、彼はあの青年より大人の落ち着きがあって、正義感の強さも負けず劣らずだ。
この店を辞めてでも、彼を探しに行きたいと思っている。
とはいえ、バイトの日々は順風満帆で、今はもう少しこのままでいいかな。
ここで働いて、いろんな友達ができた。
中には、たまに悪いことをする子もいるけど、きっと根は優しいんだと思う。
あの青年にたしなめられて、反省してたりするし。
とても素敵な仲間達に囲まれて、今日もお店は元気に営業中だ。
店長が私を呼び、犬が尻尾を振って駆け寄ってくる。
「バタコ、チーズの散歩に行ってやってくれないか」
2/20/2025, 9:38:12 PM