ミキミヤ

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私の小学校には図書館がなかったから、中学に来て図書館があると知ったときはとてもワクワクしたのを覚えている。それから1年と少し経った。放課後に図書館を訪れるのが、私の日課になっていた。

本棚の間を歩く。今日はどの本を借りようか。好きな作家は一通り読み終わって、今は読んだことのないジャンルに挑戦したい気分だった。『ノンフィクション』と書かれた棚をじっくりと眺めて、タイトルに心惹かれた1冊を手に取った。

閲覧席に座り、本を開く。ここは窓に近くて、外の音が聞こえてくる。運動部の掛け声や、吹奏楽部の楽器の音――それらをBGMにして本を読むのが、私は好きだった。



「佐藤さん、もうすぐ閉館の時間よ」

最終章に入ったところで、司書の先生に声を掛けられる。顔を上げ、窓の外を見れば、夕暮れの空が見えた。
あまりに面白くて、時間を忘れていた。
貸出の手続きをして、図書室を出た。

今日はいい本に出会えたな。ルンルン気分で廊下を歩く。
昇降口を出て、沈みゆく日と共に、私は帰路についた。

10/12/2024, 2:27:50 PM