(friends)(二次創作)
セイカが今夢中になっているのは、「ポケモンフレンズ」というゲームだった。スマホロトムで遊べるアプリで、様々なパズルを解くことで糸玉を集め、縫いぐるみを作り部屋に飾るというものだ。
サビ組事務所、ボスの部屋にて。
史上の座り心地(「はい」と言うまで立てないぐらい!)を誇るソファに腰かけ、指先で画面を忙しなく滑らせながら、時折「あっ」「もうちょっとなのに!」と声を上げる。少し離れたところに座っているカラスバは、資料に目を落としていたが、ページをめくる手は次第に遅くなっていた。
「……なあ、セイカ?」
「ちょっと待って、あと20秒しかない」
返事はそれだけ。カラスバはギロリと彼女を睨んだが、効果は無いようだ。代わりに、部屋の入り口に控えるジプソだけが背筋を強張らせていた。
最近はずっとこの調子なのだ。こうしてサビ組に顔を出してくれるが、せっかく一緒にいても上の空である。ポケモンのぬいぐるみが欲しいならいくらでも現物を買ってやるのに「そうではない」らしい。お陰様でカラスバはすっかり背景扱いである。
(まさか、ゲームのピカチュウに負けるとはな)
思わず苦笑いしたその時、セイカが小さく呻く。
「またタイムアップ……」
見れば、トロッコに乗ったヤミラミが、やたらとっ散らかった線路を前に止まっている。なるほど、線路を回転させゴール地点まで繋げるルールらしい。再挑戦するセイカの指は止まり、顔が少し曇っている。
「貸せ」
有無を言わせず端末を取り上げて、画面をタップする。ゴールからスタートに繋ぐよう意識すれば、思ったより簡単に道は繋がった。
「え?クリアできたの?」
「まあな」
淡々としたカラスバとは対照的に、セイカの顔がぱっと輝く。
「やったー!どうしてもここクリアできなくて、悔しかったんだよね」
勢いのまま、セイカはカラスバに抱きついた。それは幼い子供がよくやる行動だが、あたたかい笑顔と柔らかな体温は悪くない。今までの放置のお詫びとしても余りある行動だ。
(まあ、ええやろ)
満更でもない、とカラスバは一人笑みを浮かべた。
10/22/2025, 4:55:42 AM