(無色の世界)
君が部屋から出て行った。
狭く感じていたこの部屋が今はやけに広く感じる。
君のいた色付いた世界が、無色の世界に変わっていった。
いつも僕が起きると、君はもう台所に立っていて。「おはよう。」とコーヒーを入れてくれる。
君の作る食事は、いつも僕への思いやりに溢れていた。
出掛ける前はいつも僕に、「今日の服どうかな?」と聞いてきた。可愛いって言えばよかった。
「今日の私、どこか違うの分からない?」と美容室に行った日、メイクを変えた日、いつも僕に聞いてきた。
少しは変化に気づけるくらい君を見つめていたらよかった。
君が型どる日常は、僕への愛でいっぱいだった。
それに僕は気づくことができなかった。
今更気付いたって、もう遅い。手遅れだ。
君のいない無色透明なこの世界で1人きり、僕は君の欠片を集め抱きしめて眠ろう。
モノクロの無声映画の様なこの世界で。
4/18/2024, 10:10:55 PM