ありがとう
組んだ腕をするりと下ろす。解きはせずに指を絡める。俺を見上げたコイツは、それだけで終わりにしたようだ。
「焼き鳥がいい」
「いいね! 行きたい店があってさぁ」
「駅前のあそこだろ?」
「そう! 新しくできたじゃん? 割とお客さん入ってるみたいで」
「俺も気になってた」
雨が降ってる今日は少し空いているかもしれない。俺は××の肩に自分の肩をぶつける。ついでに体重も少しかける。信号を渡ればすぐに目当ての店だ。
テーブル席だろうか、カウンター席だろうか。
「ありがとな」
「んー? ふふ、幼馴染ですから」
「そういうもんかぁ?」
「腐れ縁ってそういうもんでしょ」
傘を叩く雨音が強くなった。信号が青に変わると、俺も××も何も言わずに大股の早歩きになる。
いちいち言わなくていいのは楽だ。
「メンマあるかなー」
「ほんと好きな、それ」
5/3/2023, 1:35:49 PM