『夜空を駆ける』
「銀河経由臨時便が増便されました。ご利用の方は、搭乗口へお向かいください」
疲れ切った耳に、どこか気怠げなアナウンスが聞こえた。
――増便?この時期に?
訝しく思ったがそんなことは後で考えるとして、先の便に乗りそびれていた私は、これ幸いと搭乗口へ向かった。
搭乗口では私と同じように先ほどまで途方に暮れていたらしき者たちが、ちらほらと集まっていた。
これといった混乱もなく、全員が乗り込み終えて出発する。
窓の外に広がる光のない景色。
「どうやらオールトの雲で新たな彗星が生まれたようですよ」
「なるほど、それで」
近くの席の者たちの会話に耳を傾ける。
――そういうことか。
しばらくすると、炎を上げて燃え盛る赤い恒星が見えてきた。
他の乗客たちも、なんとなく身を乗り出して眺めている。
第三惑星の付近を通り過ぎた時、少し違和感を覚えた。
以前通った時は、もっと青かったように思うのだが、だいぶ色合いが変わっていたような。
「あの星も変わりましたわね」
「ええ、本当に。少し残念ね」
やはり気の所為ではないらしい。
そういえば、あの星の主要生物はこの便を「流れ星」と呼んでいるのだと同僚に聞いたことがある。
あの星から見ると、ほんの一瞬美しい光跡を描いて見えるそうだ。
2/22/2025, 9:04:10 AM