必死で抗っている時、
視界が驚くほど狭くなることがある。
目の前の波を越えることだけで精一杯になり、
空の色も、風の匂いも、
いつの間にか感じなくなっていく。
逆に、完全に諦めてしまった時は、
世界そのものへの関心が薄れていく。
何が咲いていても、
誰が笑っていても、
どこか遠い出来事みたいに見えてしまう。
けれど、
少しだけ力を抜いて、
風に乗る草切れのように身を預けている時、
ふっと別の景色が入り込んでくることがある。
風に身をまかせる――
言葉だけ聞けば綺麗だ。
だが実際は、かなり不安定な行為だと思う。
どこへ流されるかわからない。
時には岩へ叩きつけられるかもしれないし、
望まない場所へ運ばれてしまうことだってある。
それでも、
抗うことをやめて初めて見えるものがある。
今まで敵だと思っていた風向きが、
実は季節の変わり目だったと気づいたり。
遠回りに見えていた流れが、
自分を壊さないための軌道だったと知ったり。
風に身をまかせることは、
ただ無防備になることではない。
「今は、抗い続ける段階ではない」
そう静かに切り替えることだ。
だから、“任せる”は、
“諦める”とは少し違う。
折れないために、
一度、風の流れを味わうということなのだと思う。
流されている人も、
流れている人も、
私にはどこか強い人に見える。
題 風に身をまかせ
5/14/2026, 9:54:18 PM