川柳えむ

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 気持ちの良い風が吹いている。
 この風に身を任せて飛んでいけたら、どんな素敵な風景が待っているのだろうか。

 ――というようなことを考えていたら、見事その風に浚われた。
 僕の体が情けない声を上げて空に舞い上げられる。
 でも、高いところで見えた風景はとても美しかった。そのままその場所にいたら、絶対に見られない風景だった。
 風が止んで、僕の体は少しずつ堕ちていく。
 少しずつ近付いてくる地面は、僕が思っていたものとは違って、硬く、汚い地面だった。

 知っている。これは、コンクリートだ。
 僕は柔らかい地面の上に産まれたたんぽぽの綿毛だった。
 そんな僕がコンクリートに辿り着いたらどうなってしまうんだ。僕らは土がないと生きられない。
 ――いや、聞いたことがある。コンクリートの間の亀裂から、植物が生えてくることがあると。そういうのを、ど根性○○と呼ぶと。それに、潰されたカエルがTシャツにへばり付いて生き残ることもあると。それもど根性○○と呼ぶと。
 とにかく、根性さえあればどうとでも生きられるということだ。

 僕の体がコンクリートに辿り着く。
「ど根性オォ――――!!」
 こうして、僕はど根性たんぽぽになった。
 僕の毎日見る景色はとても綺麗とは言えないが、僕はまた次へ命を繋いでいく。きっとその綿毛が、新しい風景を見てくれるはずだ。


『風に身をまかせ』

5/14/2024, 10:39:29 PM