さりちゃんカワイイって。さりって、私の名前。
ゆかちゃん頭いいって。ゆかって、私の幼なじみ。
大人しくて、三日月みたいな目とぷにぷにのほっぺがかわいい子。
ずっと一緒だった。私達の関係は、優しくてカワイイさりちゃんと、優しくて頭が良いゆかちゃん。
「卒業しても友達でいてね」
当たり前じゃん、学校一緒なんだから。
「さりちゃん!」
「ゆかちゃ――」
え
長い睫毛が影を落としている。三日月の目は向日葵の筒状花みたいで、お母さんの目が綺麗だったことを私に思い出させた。
太陽が居る。
「中学生になったらさりちゃんの隣に相応しい女の子になろうと思って」
白い手が私のこわばった両手を包む。
「かわいい? 勉強したてで、上手く出来てるかわからないんだけど」
お勉強はゆかの得意分野だ。……これが?
カワイイのは、さりだけでいい。
「ねえねえ名前なんて言うの」「え、ゆか? 名前もカワイイ〜!」「てかゆかちゃんさ――」
ゆかに話しかけるのは、さりだけでいい。
ゆかの代わりにさりが話してあげてたから、ゆかは誰とも話さなくて良い。
話すの苦手って言ってたじゃん。さりとだけ素で話せるんでしょ? ……なんで?
握られた手よりずっと酷く、喉がじりじりとした熱を持つ。
「ゆか……っ!」
取り巻きの知らない女の子が一斉に振り向く。……可愛い女の子。
太陽と月なんかじゃない。私はあの取り巻きの子たちみたいに照らされて輝くことも出来ない。
照らされた影が黒く濃くなっていくのを感じる。
焼ける蜜蝋の翼。さよならだ、俊敏なる青き春よ、私の特等席よ。
【太陽のような】2024/02/22
2/22/2024, 11:53:32 AM