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ある方のお別れの会に雑誌の記者だかフリーライターが来ていた。世間的に広くは知られていないけれど、ある業界のパイオニア的存在の先生を偲ぶ会だった。
参会者に新宿のお店のママさんがいて、その記者に、「あの娘が最後に先生と来ていたよ」と私の方を見ながら言った。
記者は私に話を聞かせて欲しいと言うと、私が何か話し出すのをじっと待っていた。
私がひたすら沈黙していると、しばらく粘っていたが、諦めて離れていった。
先生から託された重い秘密がこぼれないように、言葉の端から漏れ出さないように、私は黙っていることしか出来なかったのだった。

2/8/2024, 3:56:29 AM