しん、と静まった部屋。
静けさが部屋を支配して、もう15分になる。
先程言い合っていた声が耳の奥に木霊してしまうほど、部屋は静寂に包まれていた。
(困ったなぁ……。このままだと晩ご飯食べ損ねちゃうよ)
ここは私の部屋。
部屋には私の他に男の子が2人。
一人は彼氏のユウくん。
一人はセフレのマサくん。
今回ここに集まることになったのは、デートがブッキングしてしまったからだった。
男の子2人は「お前は誰だ」と言い合いをし、あわや殴り合いになりそうなところを私が懸命に止めたのだった。
その後に訪れた無音の時間。
静寂と空腹に耐えきれなくなった私は、2人の間に入ってこう言った。
「私のために争わないで!」
「君のせいで争ってるんだよ!」
仲良く声を揃えた2人が私を責めた。
/10/8『静寂の中心で』
目が覚めると、見慣れぬ天井だった。
少しして、自分が今旅行に来ていることを思い出した。
窓の外を見ると、眼下には燃えるような景色が広がっていた。
燃えるような、紅い葉。
(来てよかった……)
ちょっと奮発していい旅館に泊まったおかげで、窓からの景色も最高だ。
これから食べる朝食もきっととても美味しいのだろう。
(今日は紅葉を見ながら散策かな)
浴衣を着替えながら今日の予定を立てる。
見下ろしている景色を今度は下から見上げよう。
/10/7『燃える葉』
10/8/2025, 9:58:58 AM