コハク

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月夜
「月が綺麗だね」
「え?」
「ん?」
「あ、いやなんでもない」
最近読んだ本でそんな告白言葉を見たからつい勘ぐってしまった…。昔の人はおしゃれな言葉で告白するんだなと印象深く残っている。貴方がそれを知っているかなんて自分にはわからないのに、心の底で少し期待してしまった。
それは自分が貴方に気があるからだろう。いつの間にか抱いたこの気持ち、伝える事もせず自分の中でずっと渦巻いている。
貴方の隣に居たい気持ちと、貴方の隣よりももっと先のどんな時も傍に居たいという気持ち。伝えた事で離れてしまうかもしれないという恐怖。色んな感情が心の中でぐちゃぐちゃになっている。
そんな気持ちを抱えながらも貴方の隣は居心地が良く、全て忘れて笑ったり怒ったりしてしまう。やっぱり貴方が好きだ。
そういえば最近読んだ本は誰に貸してもらったものだっけか…記憶を手繰り寄せる。あれ…?ハッと思い出す、その本を貸してくれたのは目の前にいる貴方だ。読んでみてと渡された…確かに、そう。慌てて貴方を見ると、月を眺めていた。その姿があまりにも綺麗で一瞬声を掛けるのを躊躇うほどだったが、今がチャンスなんだと思うと貴方の手を取っていた。
驚いた貴方の表情に可愛さを思わせながらも、何も言葉を用意をしていなかった自分は咄嗟に
「月が綺麗ですね」
今日が月が綺麗な夜でよかった。

3/7/2023, 11:13:55 PM