(行かないで)
「さみしい……。」
「そんな悲しい顔すんなって!ほら、また、すぐ会えるからさ。」
「……うん。わかってます。じゃあ、またね。」
「おう。またな。帰ったら連絡入れるわ。」
付き合って三年の恋人とは遠距離恋愛中です。彼とは、たぶん上手くいってると思う。
ぼんやりと彼の乗った電車を見つめる。どんどん遠ざかっていき、とうとう、目では追えない距離になってしまった。
「もうそろそろ帰ろうかな。いつまでも一人で駅にいたってしょうがないですし。」
流石にもう慣れたとはいえ、彼を見送るのが寂しいことには変わりはなかった。
「はぁ、大学わざわざ県外にしちゃったのが失敗だったんですかね……」
こんなにも会うのが難しくなるなんて。
でも、彼と付き合い始めたのは、高校を卒業するまさにその日だったから、どうしようもなかったんだけれども。
ふと、考えた。
もっと、彼に「一緒にいたい」だとか、「行かないで」って言えたら、もう少し傍にいてくれるのだろうか、と。
なんて、
「そもそも、僕なんかが言った所で可愛くもなんともないんですけどね。」
一人、寒くなった空の下で呟いた。
10/24/2022, 12:53:13 PM