夢路 泡ノ介

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言の葉を残さずここを去り、
彼方へと赴き、影も失せた。
見せた笑顔はあの日で止まり、
焼きついた記憶は輝いたまま。
縁側で私は月を眺め、
散りゆく花弁が水面に浮かぶ。
暗がりの桃色と群青の一夜。
馳せる心に瞳が沈む。

あの日に差し伸べるべきだった。
突いて出る言葉すら出なかった。
貴方は告げずに笑みを浮かべた。
その日から私は華を失った。
好きだったことをしなくなった。
憧れていたことも忘れてしまった。
貴方が故郷に戻るまで待つだけ。
夢路で終われども私は待つだけ。
地を踏む聞き慣れた靴音ではなく、
心を包む穏やかな声から望んで。

【さよならは言わないで】

12/4/2023, 5:08:02 AM