Ryu

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桜咲くこの季節に、新しい生活を始める。
親元を離れ、一人暮らしのワンルーム。
荷物の片付けを終えて、夜を迎える。

父親がビールを飲みながら見るナイターの歓声も、
母親が夕食後に食器を洗う水の音も聞こえない。
遠くから、街のどこかを走る救急車のサイレン。
コンビニ弁当をダンボール箱の上に置いて、
昨夜までとのギャップに心が沈んでゆく。

不安と寂しさ。
今はまだ知り合いもいないこの街で、
たった一人で生きてゆく。
遠く離れた故郷で暮らす両親の顔が思い浮かんだ。
自分が心身共に支えられていたことに気付く。

ただひとつだけ、今日という日に手に入れたもの。
どう生きていくかを選べる自由。
選択を誤れば、すべてが自分に返ってくる。
やっと、自分の時間が動き出したような気がする。

夜が深くなるにつれ、不安と寂しさにもうひとつ、
感謝が加わった。
両親に対する感謝、
こんな自分を受け入れてくれる世の中に対する感謝。
冷たい洗礼を食らう可能性もあるけど、
皆と同じスタートラインには立てた。
すべてはこれからの自分次第だ。

明日は仕事初日。
コンビニ弁当のゴミ分別も怠らずに、
今夜のところはダンボールベッドで夜を越えよう。
人生第二幕の扉が開く音を聴きながら、就寝。

4/4/2024, 3:43:24 AM