亡くなっても
ココロ中でずっと、いっしょ
というけれど
私はそれは少し違うと思う
それは独りよがりの希望的ニセモノで
会いたいその人とは時と共にかけ離れていってしまう
亡くなっていようと
生きていようと
人のそれは
強く思い入れのある場所に残影する
会いたくなったらそこに赴いて
何気なくその空間で時を過ごしながら
ふと振り返った瞬間に
風が吹いた瞬間に
時報が鳴った瞬間に
お茶を淹れた瞬間に
会いたいその人に会えるものなのだ
それで少しだけ頬が緩んだら
また来るね、って
自分の時間に帰るのだ
↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦↦
夜に響く野鳩の声
汲み取り式のトイレから出て
長く続く廊下の向こう
障子張りの居間
耳の遠い祖父の趣味は
夜ふかししてみる映画鑑賞
大音量でなる
「天使にラブソングを」
一度のまばたきで
電気が消え静まり返った居間に戻る
祖父はもういない
いきどころのない
『おやすみ』
5/5/2024, 2:38:11 AM