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待ってて(オリジナル)(異世界ファンタジー)
(お題:「花束」の続き)

闘技場で戦う毎日から解放され、自由になった。
突然得た自由に戸惑ったが、とりあえず寝泊まりできる部屋と、少しのお金と、外の知識を得た。
ここは、空高くそびえるバベルの塔、その60階層。
各階に様々な研究施設があり、上層ほど優秀な者がいるという。
なので、各階層、易々と行き来はできない。

チーム戦を共に戦った後、行方知れずとなったライを探して、リンクとレッジは聞き込みを開始した。
やがて、彼は今この階層におらず、かつては観戦側にいて、おそらく上層階からの客だったであろう事が判明した。
「そんな人、牢に放り込んで戦わせる?!」
「まぁ、変人っぽかったしなぁ…」
レッジの言に異論なく、思わず納得してしまうリンクであった。

問題はふたりが上層に行けない事であった。
許可が降りない。
正攻法では、100年くらい奉仕して色々と役立って、キメラレベルをあげないと上に行けないという。
なので、レッジは塔の壁面を登ることを提案した。
「…レッジって空飛べたんだ?!」
「いや?飛べないけど?」
地上60階である。落ちたら命はない。たぶん。
外壁に足場はなく、定期的に見張りが飛んでいた。
「俺が先行して、良いところで頑丈なロープ垂らすから、登ってくるといい」
置いていかれるかと思ったが、そう提案してくれて、嬉しかった。

レッジは隠密の技に長けていた。
各階層、不法侵入を果たし、警報を避け、情報を収集し、食料や衣服をくすねてくる。
おかげで半年ほどかけて順調に80階まで到達した。
緑豊かな光差す庭園で、ふたりはついにライと再会した。
「ライ!」
駆け寄ると、こちらを振り向いた彼は不思議そうな顔をして、
「どなたですか?」
と言った。
姿も声も名前もそのままなのに、ふたりの記憶を持っていなかった。
衝撃のあまり問い詰める事もできず、すごすごと隠れ家に帰り着いたふたりは、途方に暮れた。
「あいつ、もしかして複数いるのか?」
「だとしたら、俺らを知ってるライをどう探すか」
「手当たり次第見つけて声かけていくしかないか」

とはいえ、そっくりさんも気にはなる。
彼の元に何度も通っているうちに、彼と共にいる盲目の結界治癒魔法師、ヨウと友達になった。
やがて陰謀に巻き込まれ、ヨウの命が危うくなった時、三人はまた力を合わせ、彼女を救出したのだった。
その間の、言動も、思想も、ふたりが知っているライそのものであった。
(本当に別人なんだろうか?)
リンクは疑問に思う。
そして事件が終息したところでまた、ライが消えた。

理由はヨウが知っていた。
彼は情報を集める器であると。
もっと上層に彼を使役している人がいて、その人の研究の一環らしい。
「だからたぶん、あなた方の記憶が抜かれてしまったんだと思います」
おそらく次は私の記憶も、と、ヨウは悲しそうに言った。
「何だそれ!!」
リンクは吠えた。
怒りがふつふつと湧いてくる。
「ライは納得してるのか?」
レッジが聞くと、ヨウは、
「そういうものだと思っているみたいです。でも、最近は毎回ぽっかりと心に穴が空いたみたいな気持ちになって、訳もわからず寂しいって言ってました」
「はぁ?!あいつ!!」
「記憶は取り戻せるのか?」
リンクは激昂したが、反対にレッジは冷静にヨウに聞いた。ヨウは少し考えて、
「おそらく。記憶を流す器があるって言ってましたから、残ってはいると思います。逆流させれば戻せるんじゃないかと」
「よっしゃ!」
リンクはガッツポーズをし、レッジはヨウの手を取り、一緒に行こうと誘った。盲目の彼女を守る人が必要で、それは自分たちだろうとふたりは思っていた。
足手纏いになる事を心配したヨウだったが、結局は一緒に来てくれる事になり、嬉しそうに笑った。

リンクは心の中でライに語りかける。

待ってろよ、ライ。
私たちとの事を、あれこれ思い出させてやる。
だから寂しいなんて言うな。
これからずっと、皆で一緒にいよう。

そうなれば、きっと楽しい。

2/13/2026, 1:50:36 PM