視線の先には、
のんびりと草をはむシマウマ。
群れから離れ、
こちらには全く気づいていない。
チャンスだ。
私たちはここ1週間、
獲物にありついていない。
群れのためにも失敗はできない。
他のメスライオンに合図を送る。
取り囲め
私は風下からシマウマまで
40メートルまで近づいた。
もう少し…
と、他のメスライオンが1匹、
ぴょーいと駆け出した。
まだ早い!
しかし、もう始まったからには
行かねばならない。
突撃。しかし、
というか、もちろん、
というか、
シマウマはさっさと逃げおおせてしまった。
再びサバンナに静けさが戻る。
あたり一面に草いきれ、微かな虫の声、
遠くを飛ぶ鳥の声、
太陽がじりじりと大地を焦がす音まで
聞こえてきそうだ。
私たちはぜいぜいと息を切らせながら、
木陰に横たわった。
狩りの前から一歩も動いていない
オスライオンもそこにいた。
お腹減ったなあ
私たちもよっ
私のいとこにあたる、
先ほど駆け出してしまったメスライオンが、
頭を擦り付けてきた。
ごめん…
仕方ないわよ、と私は彼女の顔を舐めた。
そして
サバンナのはるか彼方を再び見つめる。
視線の先は、陽炎しか捉えない。
ああ、ヌーの大群でも
現れてくれないかな…。
7/20/2023, 3:31:58 AM