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こういう気持ちのいい天気の日は、夕方からベランダに丸椅子を二つ持ち出す。
古い団地のベランダは狭くて無骨で、おしゃれなバルコニーとは程遠いが、毎日手入れするいくつかの小さな鉢植えの花と、ちょうどいい陽の当たり具合で、私にとってはお気に入りの場所だ。

いそいそと並べた丸椅子の一つにポットとマグカップを置き、残りの丸椅子に腰掛ける。
ベランダの外には団地の緑地が広がっていて、この高さからは遊歩道に沿って植えられた木々が見える。
少しずつお茶を飲みながら、風に揺れる木々が濃いのや明るいの、いろいろな緑を見せてくれるのをぼんやり眺める。
空のあの青は何だろう、セルリアンブルーだっけ、そういう青だなぁなどと考えながら、お菓子をつまむ。
やわらかな風に乗って、子どもたちの声が聞こえてくる。
近くの小学校の下校時間なのだ。
楽しげにはしゃぐ男の子や女の子の声が、晴れた空に団地に響きわたる。

娘や息子も、あのくらいの年の頃があったんだっけ。
今じゃ二人ともすっかりおばさんおじさんになり、私はおばあさんになったけれども。
「おかあさーん!」
大きな声で私を呼び、駆け寄ってくる幼い我が子の姿は、いつまでもいつまでも愛らしい記憶だ。

木々の間を飛び交う鳥のさえずりに伴奏するように、子どもたちの笑い声がこだまする。
微笑ましい協奏曲を聞きながら、私はまたカップにお茶を淹れる。

4/17/2025, 7:28:30 AM