深夜徘徊猫

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「願いが1つ叶うならば」

 私は小さい頃から願望が少なかった。元の性格が消極的なのだ。私の親は私のやりたいことをなんでもやらせてくれて、なんでも物を買ってくれて全て叶ってしまう。それはそれでいい人生なのかもしれない。

 親は私によく問う。

「やりたいこととか、お願いごととかないの?」

 私のやりたいことはなんでも叶えないと気が済まないらしい。それでも私は何にも思いつくことは無かった。

「何にもないよ。」

「何かしらはあるでしょ?」

 そう問われるのが嫌いで仕方なかった。みんな私くらいの年齢の子は、生き生きとしていて、アイドルになりたいとか、プロのスポーツ選手になりたいとか願っているのに私は何にもない。

 まるで私の心だけがすっぽ抜けているみたいだから。

 七夕の短冊も、誕生日プレゼントも、どうでもよかった。だって、私の周りには全て欲しいのものが転がり込んでくるから。私の親がそうするから。願う暇もないから。

 でも最近、願いを見つけたんだ。

 もしも、願いが1つ叶うのならば、

 私はもう願わなくても良い存在になりたい。

3/10/2025, 3:35:57 PM