椋 muku

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光があるから闇がある。そういう例えを私が生まれるずっと前に誰かが言っていた。誰が言ったのかもあやふやだし今じゃ名言を作り出したい奴らが言っているテンプレートみたいなものだ。
単調な光。影を作るように表裏一体になった闇。私には何が光で何が闇だなんて全く分からない。ただ、例えるとするならば人の性格のようなものなのだろう。

カーテンから差す光が眩しくてつい目を細めてしまう。今日の天気予報は曇りだったはずなのにめっきり晴れてしまった。
君が眠そうな顔をして登校してくる。私の隣の席。君は決まって朝は大人しい。おはよってたった一言声をかけてもよっぽどの事がない限り返事なんてしてくれないんだから。時間が経つにつれて君のテンションも上がってくる。私へのちょっかいも増えてくる。君のことを愛おしく思う気持ちが今日もまた増していくんだ。君の笑顔に寝顔、照れた顔も全部全部私だけが独り占めしていたい。どんな君の姿も受け入れられるよ、きっと。

家に帰ると私の性格が一変してしまう。君のことを「好き」だと思えず君と仲良くしてしまう自分に嫌悪感を抱く。私は君のことが「好き」なはずなのに「嫌い」なんだ。君が愛おしくて憎い。触れたい。近づきたくない。正反対の言葉ばかりが飛び交う。私は君の人気が羨ましくて私も同じように愛されたかった。でも恋愛なんて恋仲なんて望んでいる私もいた。でも女にも男にもなれない私は同性も異性も遠ざけてしまう。私には私がいれば十分なはずなのに愛に飢えている。愛されたい、でもみんなが嫌いなんだ。もう1人にしてくれ。君なんか大嫌いだ。

私の光と闇。表と裏みたいなもの。どちらも本当の私。相手を受け入れる以前の問題。私は私自身を受け入れられない。そんな光と闇の狭間で私は今日ももがいている。自分の本当の気持ちに気付けず、気付こうとせずに生きている。

私の大嫌いな君に気づいて欲しいな。

私の大好きな君に届いて欲しいな。

題材「光と闇の狭間で」

12/2/2024, 11:04:04 AM