お題『永遠の花束』
もうダメかも、なーんて
何度も思ったけど
きっと大丈夫だって、なんとかなるって
特待生サマは1年経っても
怪異になんてならなくて済むって、
勝手に、思い込んじゃってた。
酷く甘い匂い、そしてその匂いの元凶で、
辛そうな顔をしている特待生サマ。
今にも、泣きそうな顔をしていた。
「玲音……くん……」
シンとしているこの空間だからこそ、
やっと聞き取れるような小さな声で
特待生サマはオレの名前を呼ぶ。
「……何?」
冷たく返事をしてしまう。
ここで優しく返事をしたら、
今にも泣いてしまいそうだったから。
1番不安で、怖くて、泣きたいのは
オレじゃなくて、特待生サマなのに。
オレが泣いてしまったら、特待生サマは
気を使って泣かないように頑張ってしまう。
それだけは、どうしても嫌だった。
「多分……私はもう少しで………
怪異に…なっちゃう……ので…
私の………ちか…くに…いない方が…
良い………ですよ……。」
最期の最期にまでオレに気を使っているのか
オレがこの部屋から出ていくように促す。
「は?オレが今出ていって、特待生サマが
怪異になっちゃったら、誰が対処すんの?」
特待生サマの優しさを踏みにじるかのように
再び冷たく返事をする。
「あはは……そう…ですね……」
特待生サマは悲しそうな顔をしながら
苦笑いをしていた。
タイムリミットまでもう恐らく5分程しかない。
今このタイミングを逃したら
特待生サマと会話をすることも出来なくなる。
自分のプライドが邪魔をして
こんなことになるまで言えなかったことを
特待生サマに言おうと思う。
「ねぇ、特待生サマ♡」
よく特待生サマにオネダリをしていた時に
出していた甘ったるい声を出す。
「なんで……しょうか…?」
特待生サマはいつも通り優しく返事をしてくれるが
いつもとは違い、優しい表情ではなく
キツそうで、辛そうな表情をしていて、
それが本当にもう最期なんだと
改めて思い知らされる。
「オレ、さ。
こんな時になるまでプライドが邪魔して
ずっとずっと言えなかったけど、
特待生サマのこと、恋愛的に、好きだよ。
言うのが、こんなに遅くなったこと、
結構後悔してる。」
真剣な表情をして言ったつもりだけど多分、
オレ今、悔しそうで、泣きそうな顔、
してんだろうなぁ…。
「玲音…くん……、
ありがとう…ございます……。
私も……玲音くんの事………好き…でした…。」
最期の力を振り絞って特待生サマは
優しくオレに微笑んでくれた。
それがほんとに嬉しくて、そして悔しくて。
気づいたら涙が止まらなくて。
泣いてしまっていた。
「っ…、なんだ…特待生サマもオレのこと…
好きだったんじゃん…
それなら…もっともっと早く…言えばよかった…。
なんで……ずっと言わなかったんだろ…。」
泣きながら特待生サマを優しく抱きしめた。
「あはは……私も…もっと早く……
言えばよかった…なぁ……。」
特待生サマはそう小さく呟くと
静かに目を閉じた。
「っ………。クソッ…。」
そっと特待生サマから手を離す。
すると特待生サマの頭から
綺麗な花が生えてきて
その姿は特待生サマはもう
オレに知っている特待生サマじゃないんだと
オレに思い知らせるには十分だった。
「����������」
特待生サマだったものがオレに何かを言っている。
何を言っているかなんて全く分からなかった。
特待生サマの頭は花で覆われてしまっていて
それは、花束のようだった。
もう特待生サマは人間に戻ることは無い
ずっとこのままだ。
───"永遠の花束"
その単語が頭の中をよぎった。
「ねぇ…これさぁ…あんたに殺されれば、オレ…。
特待生サマの養分に少しはなれるんじゃないの?」
いつも通り、余裕気な表情をし
怪異に問いかける。
勿論オレの問に返事はしてくれない。
「無視…か…。それもそっか……。」
オレがそう呟くと同時に花束の怪異は
オレを殺そうとしてるのか、
それともオレを養分にでもしようとしているのか、
オレに襲いかかってきた。
「あー、終わりか、オレの人生。」
抵抗する気などハナからなく
オレは両手を上げ降参のポーズをし、
静かに目を閉じた。
「特待生サマ、オレもすぐ行ってあげるから、
オレのこと、待っててね♪」
これは二次創作です
2/5/2025, 9:49:12 AM