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未来を見れる能力があったなら、人生はもっと華やかになっているのだろう。
失敗もせず、挫折も知らない。そんな人物へと成り上がっていたのではないだろうか。
「と、思うんだけど。」
「…へー。」
珍しく顔を合わせた妹は、退屈そうに私の話を聞いていた。高校と大学、少し歳の離れた私達姉妹は家ですれ違うことはあれど話す時間を儲けるほどの余裕が無い日が続いていた。
そんな忙しない日々の中、私は突然の休講で、妹は期末休みというものでたまたま休みが被った。久々の二人での休暇に何となく行きたかったカフェに妹を連れて行こうと誘ったのが今日の始まりだ。まぁ誘ったのはLINEだったので、妹には「もっと早く言え。」と怒られたけど。

カフェに入り数分、最近の出来事を話していた時に友人に聞いた話を思い出して未来を見れる能力の話を出してみた。毎回学年一位の優秀な現実主義の妹に話すのは流石に間違ったかもとは思ったが、許して欲しい。
「未来ねぇ。」
すぐに話題は変えられると思ったが、妹は予想に反して少し考え込むように窓の外を見た。
頬杖をついた横顔は、まつ毛が長いこともあり生意気にも可愛く見える。我が妹ながら顔が良いなぁと思いながら見つめていると、数分で考え終わったのかこちらに妹の目が向いた。
「楽しくないよ。未来が見えても。」
至って真面目に放たれた言葉に、だいぶ真剣に考えたんだなと首を傾げる。妹にとってそこまで興味のそそられる話であったか。
「今から会う人達のことを元から知ってたら、その人達と知り合ってからの楽しみが失われるじゃん。だから、嫌。」
「なるほど。」
思わず頷いた私に、妹は満足そうに目の前にあるパフェのポッキーを口に運ぶ。確かに、そう考えたら未来を見たいなんてことは思わないな。妹からすれば失敗は経験として積まれ、挫折は次に立ち上がる力として吸収するものという認識なのかもしれない。
そこまでできた妹なのかは分からないけど、少しだけ彼女の未来が面白く思えた。あぁ、でも。
「もしも未来が見れるなら、貴方の結婚相手がちゃんと貴方を生涯幸せにしているのかだけ、確認したいかも。」
「シスコンか。」
そうだよ?と私が笑うと、妹は照れたようにスプーンで掬ったアイスを口に入れる。
この可愛い妹が挫折や失敗で心を壊さないことを、未来の見えない私はただ祈ることしかできないけれど。
妹が言った言葉で、未知の未来もまたいいかも。
と思ったのだ。

4/19/2023, 11:13:06 AM