夢を見てたい
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ふぅわりと浮いた心地。
パステルカラーの雲が柔らかく、暖かく私を包み込む。
そのまま私は綿飴になってあの人の口のなかで溶けた。
そんな夢を見た。
ひたひたと冷たい廊下を裸足で歩く。
足元にある水たまりにトプンと浸かると、ゆらゆら揺れて、桃色のジュースになった。
そのまま私は冷蔵庫から出されてあの人の喉を通った。
そんな夢を見た。
ふと、目が覚めると暗い部屋の中だった。
ベッドから這い出して電気をつける。
まるで見覚えのないその部屋は、夥しいほどの『私』で埋め尽くされていた。
棚の上にはお人形。
ティッシュの箱には似顔絵。
壁には写真がたくさん。
そうやって部屋をぐるっと見渡す。
ゴミ箱に捨てられた綿。
机の上の飲みかけのジュース。
「おはようございます。良い夢が見られましたか?」
振り返ると、あの人がいた。
「……嬉しそうですね。そんなにいい夢でしたか? 私には到底分かりませんね」
私はゴミ箱に捨てた綿を無造作に掴んだ。
夢みたいに、あの人の口で溶けてしまいたい。
それか、ジュースのように飲み下されたい。
「あの、来ないでください。ほら、今日の分のお薬を飲んでくださいね。そうしたら、また夢が…良い夢が見られますよ」
夢だけじゃ足りないって、言っても多分伝わらない。
だから私は夢を見る。
「おやすみなさい」
でも、心地が良い。
ずっと、ずぅっと、夢を見てたい。
1/14/2026, 12:24:53 AM