兄は鼻唄をよく歌う。
それは天気が良い日、機嫌が良い時、コーヒーを淹れている時。歌詞も曖昧に口ずさむ。
「それ、なんて曲?」
兄が答えたのは僕が知らない曲だった。
特段音楽に興味が無かった僕は、そのタイトルを頭の隅に置いておくに留めた。
僕はその曲を、頭の隅からもう一度引っ張り出すことになる。
それは学校の帰り道、君の隣を歩いている時だ。小鳥がさえずるようなハミング。僕はその旋律にピンときた。
「この曲知ってるんだ!?」
僕が曲のタイトルをあげると、君は驚いて叫んだ。どうやらずいぶん前の曲らしい。
兄が歌っていたと伝えると、君は「お兄さんと趣味、合うかもなぁ」と微笑んだ。それから、この曲を歌っているアーティスト、歌詞の解釈、時代背景などを、目を輝かせて話し始めた。
君の話に相槌を打ちながら、僕は兄に感謝していた。
こんなに楽しそうに話す君を見る事ができたのだから。
10/19/2025, 1:39:43 PM