手紙の行方
幼い頃 まだスマホが普及してなく手紙でのやり取りが
学校では流行っていたときの話。
当時の私は字を書くのがとても苦手だった。
ノートのマスの中に収まるように書くように鉛筆を握るが力が入りすぎて手が震え思うように動かなかった。
でも先生は私の字を可愛らしいと言ってくれた。
大人になった私は先生からの言葉はもちろん相手を傷つけない為に気遣って言ってくれたんだと安易に分かる。
それでも当時の私はその言葉がとても有難かった。
ある日先生から最近流行りの文通のやり取りについて
どう思っているか聞かれた。
無論先生は私は字が苦手な事を知っているので気遣ってくれたのだろう。
私は素直に苦手だと答えた。
でも私は長文は苦手だが短文はそんなに苦ではなく
むしろ絵を取り入れながら出来るので得意だと先生に教えてあげると先生は何故か微笑ましく私を見てきた。
私はおかしな事を言ったのだろうか?
そんな顔をしながら先生を見ると先生が口を開く。
先生と少し長文の練習の為に手紙のやり取りをしてみないかと提案された。
私は今まで見せたことの無い嫌な顔をする。
それを察したのか先生は可愛いぷくぷくシールを毎回
貼ってくれると約束してくれた。
ホントだろうか、嘘であれば「うそつき」と
さけんでやる。
それから1ヶ月先生との文通のやり取りがはじまった。
やり取りって言っても今日の遊びの内容やら可愛いぷくぷくシールの情報などだ。
最初は楽しくもなくひたすら書きなぐるように文を書いて先生のやる気を無くしてやろうと意気込んでたが先生はどんな文字であれひたすら褒めてくれた。
またちょっとした豆知識を最後の文に書いてくれていたので毎回見るのが楽しかったし先生との文通が楽しみになっていった。
そして最終日、私はいつも通り朝先生からコソッと渡された手紙を読む。そして帰りの会後に手紙を書き、職員室の先生の元へと持っていく。
「今日のお手紙長かったけどいつも以上に沢山褒めてくれたな。」
幼い私は 文が難しすぎて読めなかったが絵が沢山手紙には描かれてありニコちゃんマークも沢山あった。
私はこれまでの成果を見せるためにいつも以上に手に力を込めて書く。一つ一つ線をかき言葉が伝わるように
「せ、ん、せ、い」
この文だけで鉛筆は5〜6本ほど折れている。
すでに手は鉛筆の芯で真っ黒だ。
それでも想いを込めて先生への手紙を書く。
「あ、、、、り、、、、、」
「が、、、、、、」
「と、、、、う、、、、」
私のお気に入りのシールが沢山貼ってある封筒に入れ先生の元へと駆け足で向かう。
職員室に行き先生の名前をいつもより大声で叫ぶ。
周りの先生たちの目は大きいけどそれでもいい。
ふと周りの先生たちの間で小さくなっている先生を見つ
けた。
私は駆け寄り先生に手紙を渡す。
「はい!これあげるぅ」
もちろん宇宙一最高の笑顔という贈り物で。
職員室から自分のクラスへと歩を進める。
顔は笑顔なのに心がザワザワする。
私は胸をぎゅっと手で押える。
この感情何、、、
「先生、、、、からのお手紙、、、、もう、、、、
もらえないの、、、、、、」
突然顔からお水があふれだす。
袖口で顔を覆うがとまらない。
先生の言葉がうれしかった。
先生の絵が好きだった。
手紙を渡した時の先生の喜ぶ顔がもっと見たかった。
だけどもうその瞬間はこない。永遠に、、、
その事実が重くのしかかる。
すると奥の廊下から走ってくる先生の姿がみえた。
次の瞬間私は暖かい温もりと肩が濡れた感触があった。
「せ、、ん、、せい?」
私はびっくりしたけど顔を見るとなんだか水で濡れてるみたいだから先生の頭をよしよしする。
先生は言葉を紡ぐ。
「ありがとう」と
私は先生の言葉を理解できないがその代わり大きく頷き
先生に1番に伝えたかった言葉を言う。
「うそつきじゃなかったね」と
その言葉に先生は今日一番の笑顔を見せてくれた。
それから私のクラスでは学級日誌といって生徒1人ずつに日記を書くノートが配られた。
先生は子供達に自分たちの思ったことを1日1回書いてねと伝える。
クラスメイトは不満や不平を言う子や嬉しくて飛び上がる子など反応は様々だ。
以前の私では不満を言う側だっただろう 。でも今は、、
先生と目が合う。
先生は普段と変わらずとても優しい目で私を見てくれた
あの時と変わらずに、、、、
私はそんな先生が大好だ。
あぁ、言い忘れてた。
あの手紙の返事がまだ来ない。
もし先生に会うことがあったら伝えといて欲しい。
「てがみのお返事まだーーー?」と
2/18/2025, 11:48:08 AM